啐啄。
2013年 03月 30日
会長は“昭和生まれの頑固を絵に描いたような気性の方”で、
初めてお会いしたのは、まだまだ新米デザイナーの頃。
ダイレクトメールのお仕事で、
2mmこっち、これは5mmこっちと的確な校正の指示をいただき、叱咤されながら
『こういうのをね、啐啄(そったく)っていうのよ』。
意味がわらからずキョトンとしていると、
『雛が卵から孵ろうとする時、母鳥が外から殻をつついて手伝うことをいうんだよ』
ってニコニコしながら教えてくださった。
ほどなく、新ブランドのパッケージのお仕事をいただき、初めての立体デザインを緊張しながら制作し、社長に3タイプご提案したら、
『お!一発でいいのを作ってくるとは思わなかった!』
と最初のご提案の中から即採用をいただいた。
その時手にした緊張と喜びを今でも忘れることはない。
私が今も同じ仕事を続けていられるのは、会長との出会いと、この時の心地よい緊張と喜びが心に残っているから。
いつものガラガラの声で『◯◯さん(私)は、頑固なところがあるからねー』
と、頑固一徹に言われたことが懐かしく思い出される。
数年療養されていると伺って会えず仕舞いだった。
86才、大きな星がまた空へ。
会長に心から感謝し、ご冥福をお祈りする夜。
ありがとうございました。
(写真はリニューアル後の2代目パッケージ。こちらも担当させていただきました。)